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砂中子の課題解決を期待できる複層砂中子の新工法の開発に成功
2023年8月 ウィンズテック株式会社

ウィンズテック株式会社(本社:福岡県久留米市、代表取締役:案納亨介)と旭有機材株式会社(本社:宮崎県延岡市、代表取締役:中野賀津也)は、共同で複層砂中子の新しい製造工法の開発に成功し、当該工法は特許第7241370号の認定を受けました。

複層砂中子の新工法開発の背景

中空形状を有する鋳物を製造するために使用される砂中子には、次のような機能面での課題がありました。

・崩壊性が悪く、砂出し工程に時間と労力を要する

・ガス欠陥の要因となる

・1層構造では高額な材料(骨材・樹脂)の使用量が多くなる

これら機能面での課題を解決する2層式シェル中子が開発され量産されてきましたが、従来の工法では製造上の課題も複数存在し、市場ニーズに応えることが出来ておらず普及の障壁となっていました。

複層砂中子の新工法の特徴

今回開発に成功した新工法では、従来工法の課題を以下の通り解決することができました。

・品質が不安定な反転排砂が不要なので、中子の品質を向上させることが出来る

・反転排砂が不要であり、中子形状に制約を受けず任意の形状に製造できる

・一般的な中子製造装置で製造できる

従来工法と新工法には下の図のような違いがあります。

【図1.従来工法】

従来工法2.png

【従来工法のメリット】

・1サイクル造型が可能

 

【従来工法のデメリット】

・未硬化砂の排砂時に、均一な排砂が出来ない→季節や環境による品質のバラつきがある

・曲がりくねった形状では、未硬化砂の排砂が困難→形状に制約がある

・シェルに限定される

・ブローヘッドを2台有する特殊な構造のシェルマシンが必要→追加の設備投資が必要

【図2.新工法】

新工法2.png

【新工法のメリット】

・内層も外層も自由な形状にできる

・強度や崩壊性といった要求品質に応じた設計ができる

・一般に使用されている既存の中子造型機で製造できる

・シェルに限定されない

 

【新工法のデメリット】

・内層中子造形用と外層中子造形用の2面の金型が必要

・連続造型が出来ない→内層造形工程、外層造形工程等々層の数に応じて工程が増える

複層砂中子の効果が期待される分野

複層砂中子は以下の分野に効果を期待できます。

アルミなどの溶湯温度が低い鋳物

溶湯温度が低い鋳物の場合には、樹脂の強度劣化が起きにくいために、崩壊性が悪く砂出し工程に課題があります。

その解決手段として中空中子を使用する方法がありますが、中子の肉厚を薄くすると中子自体の強度が低くなるため、ハンドリングや注湯の際の破損が懸念されます。

また、破損を防ぐために樹脂量を増やす、高強度の樹脂を使用するという対策をとるため、ガス欠陥の要因となることや、材料費が高額になるという別の課題も生じます。

→今回開発した新工法の複層砂中子を採用すると、崩壊性に課題がある箇所のみを強度を落としたRCSで造型することが可能になります。中子自体の強度を持たせる箇所には従来のRCSを使用することや、粒度も自由な設定が可能であるため、崩壊性と強度の両立が出来るだけでなく、ガス欠陥の対策も達成可能です。

【表1.骨材の目の粗さと樹脂量がRCSの特性に与える影響(想定) 】

【骨材】天然珪砂 新砂100%

【樹脂】汎用タイプ

RCSの特性表.png

※樹脂の添加量が多いほど強度は出るが、ガスの発生量も多くなる

※骨材の粒度が細目の方が高強度になる

※450℃に30分間曝すと、樹脂の添加量に依らず約9割近い強度劣化を得られるが、

 350℃では30分間曝しても3割~4割の強度劣化に留まる

※アルミ鋳造に於いては数秒から数分で200℃程度まで冷却されることから、

 実際に砂中子が鋳物内部で高熱に曝される時間は短く、強度劣化もほとんど起きない

ガス欠陥が懸念される鋳物

ガス欠陥は鋳物不良の代表的な物です。

中子を起因とするガス欠陥は多くの場合、樹脂の熱反応により発生したガスが溶湯中に巻き込まれることで発生します。

​→複層砂中子を採用すると、溶湯と接する最外層には細目の骨材を使用して、樹脂の添加量を減らしつつ強度を持たせることが出来ます。また、内層の骨材は目を粗くすることで、中子からのガスの発生を抑えつつ通気性の確保が出来ます。中子から発生したガスは中子内部を通って鋳型の外に排気することが可能です。

【表2.骨材の番手による通気度の比較】

RCSの特性表2.png

特別な鋳肌が求められる鋳物

完成品の用途によっては、高品質な鋳肌が求められる場合があります。

高品質な鋳肌を達成するためには高品質な骨材と樹脂でRCSを製造するのが一般的ですが、材料コストが高額になるという課題があります。その一方で、溶湯に接するのは鋳型の表面部分に過ぎず、内部のRCS は溶湯の直接的な影響を受けないままその役目を終えて再生砂となるため、高品質という価値が失われます。
→複層砂中子を採用すると、溶湯に触れない内層には比較的安価な、一般的な品質の骨材や樹脂を原料としたRCS を用いることができます。材料コストが高額な高品質のRCS は外層の使用に限定できるため、材料コストの面で原価低減を達成できます。

【図3.骨材価格の比較例】

※RCS価格をそれぞれ新砂@200/㎏、再生砂@40/㎏とする

※外層と内層の使用比率を2:8とする

RCSの費用比較.png

アルミダイカスト

アルミダイカストでアンダーカット部を成形する手段としては、金型にシリンダーを用いる引抜中子を使用することが一般的ですが、得られる形状は大抵の場合に直線形状に限定されます。

しかしウィンズテック(株)では、これまでも中空水路を有するダイカスト製品の量産に2層式シェル中子を提供してきました。

一方で、従来工法には製造上の課題があり、市場のニーズに応えられないことが殆どでした。

今回開発した新工法ではそれらの課題を次の通り解決することが出来ます。

・一般に普及している既存のシェルマシンで製造できる

・反転排砂が不要であり、中子形状に制約を受けず任意の形状に製造できる

・一般に中子として製造できる形状であれば製造できる

つまり、これまで製造は不可能と考えられていた、複雑な中空形状を有するダイカスト製品も製造可能となり、アルミダイカスト製品の用途の幅が広がります。

今回開発した複層砂中子の新工法を用いることで、鋳物の品質と生産性の向上だけでなく、幅広い市場のニーズに応えられるようになります。

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